光文社文庫
大好きなぶたぶたさんシリーズ。
だったのだけれど、今作はなんか、ひどかった。色々ひどかった。
すごい久しぶりにこの記録をつけようと思うくらいにはひどかった。
一言で言うと、物語がすごく雑だった。
とりあえず気になったことを箇条書きしていくと
・母親の改心のきっかけが「ぶたぶたさんを見た」だけ
・同じ短編で父親が結局まったく出てきてないが、入院騒ぎがあってそれは
あまりにも不自然では?
・っていうか検査して午前中に退院ってありえなくない?
・何もできない人がゴミ出しはできたの? 水回りの掃除とかは?
・元カレで複雑な事情があるのを知っても一緒にライブに行くと言われて、
しかも会わせてあげると言われて喜べる無神経さ。子供だからとはいえ
普通もう少し躊躇わない?
・せめてそこは大人のぶたぶたさんが「本当に大丈夫なのか?」心配する場面では?
・短編に2人分のエピソード詰め込んだせいで、どっちも中途半端
・ぶたぶたさんの正体を探りに来たはずなのに、本物のぬいぐるみであるということを
驚いたり受け入れたりする描写がない
そして最後の短編も「なんとなくこういうことなんだろうな」とは察せられるのだけど
細かいところで「でもそうだとここがおかしくない?」ってのがあって、なんか
すっきりしない。
以前の作品でも思ったのだけど、この作者は基本的に人間関係のドロドロ系、特に
家族(親子)の確執を描くのが苦手なのではないだろうか?
もしくはぶたぶたさんの作風とそれらが相性が悪いか。
こんなことがあった、あんなことを言われたと描写を重ね、なんとかそこから
抜け出そうと、ぶたぶたさんとの出会いをきっかけに新しい視点で生きていこうと
…ってところからの急降下がなんか拍子抜けしてしまうことが多い気がする。
もちろん物語の中ですべてを描く必要も、そして解決させる必要もないし、
「新しい視点で生きていこう」と思うところまでが目的ではあったのだろうが…
重ねられた「それまで」の描写と、自分だけではなく相手も変わっていくかもしれない
「これから」の予感との描写の差が…ありすぎると思ったのだけど、これは単に私が
もっとそれを読みたかったというだけか。
物語目線の「自分」はともかく、確執の相手(最初の短編なら母親)はどうしても
ぶたぶたさんとの触れ合いは少なくなるし、だから「え、そんなことで?」って
感じになるのは仕方がないのか。
とはいえ、やっぱり「ぶたぶたさんを見た」だけってのは、ぶっちゃけシェアハウス
全然関係ないじゃん!って思ってしまった。
乱暴な言い方をすれば、ぶたぶたさん自体とその舞台背景にしっかり描写を割かなければ
ならないこのシリーズで、短編で人間関係の確執をテーマにするのは難しいのでは?と
いうこと。
最初にあげた気になる点も、せめて中編だったらもっとしっくりきていた気がする。
とはいえ、ぶたぶたさんというふわふわした存在も合わせて、重くなりすぎないように
というのがそもそもの狙いであるのならば、単純に私の好みと合わなかったということだ。
…前に気になったのは長編だったから、結局そういうことなのかなぁと、ここまで
書いて思った。
というわけで、最初に書いた「ひどい」は「ひどく好みと合わなかった」に訂正する。
#
by happiness_riki
| 2020-01-15 15:22
| *読書記録 作家やわら行