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『天使の囀り』貴志祐介

角川ホラー文庫 再読

初版は平成12年だってよ!

知人とたまたま話が出て、ふと読み返したくなって再読
細かい部分はアレだったけど、そんな前の作品だったのに大まかなディティールを覚えていたのは
それだけインパクトが強かったということか。

インターネット事情などところどころに時代は感じさせるものの、今読んでもまったく
古臭さを感じさせないのがすごい。
まぁその分野の専門家が読んだら今とは違う部分もあるのかもしれないが、
あくまでフィクションとして読む分には何も問題なく、すんなりと作品世界に入っていける。

しかし改めて読んでも気持ちが悪く、気分が悪く、でもちょっと悲しい話だ。

話もとても丁寧な構成で(生意気発言!)、最初の方にさりげなく出てきた物が
後になってそういうことかと思わずページを遡ってしまうこともしばしば。

こういう時、電子書籍も良いけどやっぱり紙の本だよなぁなんて関係ないことまで思ったり。

ただ今回読み返して、最後の処理を任せてしまって大丈夫だったのだろうか?
もうずいぶん前の作品だからあまりネタバレを気にする必要はないかなと思いつつぼかすけど
処置の際に危険はないのだろうか……と書いてて思ったけれど、そもそも職場がHIV感染患者専用の
ホスピスであることを考えると、処置の際は(当時の)普通の病院より万全の予防対策をもって
行われるだろうからあまり心配しなくて良いのかな?
ってそこまで考えて職場を設定したとしたらマジですごいな、貴志祐介……



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# by happiness_riki | 2023-05-28 01:44 | *読書記録 作家か行
ハルキ文庫

いつ購入したか覚えてないけど安積シリーズ新刊だ!と奥付けをみたら2021年7月発行だった。
どんだけ積んでたんだ……

今野敏の警察小説の中でも一際地味な安積班シリーズ。
今回は殺害されたのがグラビアタレントとのことなので、華やかな芸能界を舞台に……と
なりそうだったけど、あんまりならなかったな。

このシリーズ、実は好きな人はすごく好きだけど、苦手な人もいるのではないかと思っている。
それは安積がとにかく作中でひたすら悩んだり被害妄想を抱いたりと悶々としているからだ。
特に安積視点で描かれることが多く、そうすると作中1/3、は大袈裟かもだけど1/4くらいは
安積の悶々を読むことになる。

安積は周りからの評価は上司部下共に高いのだけど、本人は全然自分に自信がなくて、
部下の顔色を窺ったり、自分の発言を振り返って悩んだりと、本当に悶々としている。
特に村雨というとても刑事らしい刑事が部下にいるのだが、彼のことが安積は本当に苦手で、
長年一緒にやっていて信頼もしているのに「自分の今の行動をよく思ってないのでは?」とか
心配しちゃうのだ。
村雨自身にも安積の苦手意識は伝わってて、それでも自分のやり方で安積を支えていくと
考えていて、安積はもうちょっと村雨に心を許して欲しい。本当に。

と、長年やっているシリーズの割に人間関係があまり変化しないのも特徴の一つなのだが
1人だけ初登場当時とずいぶん違っている人がいる。
元々はめっちゃライバル視してて、やることなすこと全部安積の逆をいきたいような人だったのに
今作ではむしろめっちゃ味方じゃん?みたいになってて、ちょっと萌えた(笑)
いやライバル視している点は今も変わってはいないみたいなんだけど、それは前とは違い
ちゃんと安積を認めた上でのライバル視なので捜査上で悪い影響が出るようなものではない。
(逆に言うと前は悪い影響が出かねないようなライバル視というよりは敵意に近い感じだった)
今はまだその人が安積の影響を受けて変わってきたところだが、これから安積が逆に影響を
受けてまた関係性が変わってきたら良いなと思う。
っていうか自分の考えに自信を持つところは少し見習ったほうが良いと思う……

事件が佳境に入り刑事たちの熱量が上がってくると読んでいるこっちも興奮してくる。
この辺はさすがベテランという感じで、決して派手なアクションや捕物があるわけでもないけど
ちゃんと盛り上がりワクワクとさせてくれる。

が、今作ではちょっとフォローというか、描写不足では?と思う点があった。

一つは最初のマネージャーの証言、これが実は違うのでは(故意ではなく勘違いで)という可能性が
出てきたのにマネージャーに再度確認を取る、もしくは取ったような描写がなかったこと。
一応違うのではという可能性が出た時点で裏を取ってみなければと発言はあるんだけど、
それを確認する前に違うこと前提で話が進んじゃって、結局確認を取ったのかわからない。
少なくとも被害者と一緒にいる時間が長かったマネージャーがそんな勘違いをするというのも
若干説得力に欠けるし、そこはちゃんともう一度話を聞いて勘違いしても仕方ないとか何か
納得させて欲しかった。

そしてもう一つは犯人の動機に関して……
ここからはネタバレ全くなしだと全く伝わらないので若干のネタバレありです


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# by happiness_riki | 2023-05-16 22:34 | *読書記録 作家か行
河出文庫

宮部さんの初のSF作品集ということで

自分は面白さがわかるSFとわからないSFがはっきりしていて、
作品の中のいくつかはわからないSFだった

それは決してつまらなかったという意味ではなくて、
途中までは面白く読めても、最後の意味がわからない
むしろSFにしないでいつものミステリで書いてくれてたら
きっとすごく最後まで面白かっただろうなと思ったりもした
(失礼)

この辺はもう相性というか、読んできた本の歴史とかもあるだろうから
仕方がないと思っている

SFは本当に範囲が広いというか、わかりやすいテンプレみたいなのから
本当に意味がわからないものまで色々あるので
SF小説に出てくる「設定」は結構好きなだけに、ちゃんと自分が
理解できず読めないのが残念ではある

# by happiness_riki | 2023-04-29 19:10 | *読書記録 作家ま行
角川文庫

その壱(とタイトルにはついてないけど)は先にコミック化されたのを読んで、
それから文章の方を読んだのだが、静かな怪談の雰囲気が気に入ってたので
続きが出て期待したのだが。

今作はちょっと期待したのと違う感じだったなという感じ。

っていうか一作、読み始めてすぐイヤな予感がして内容をおおよそ先見して
飛ばした作品があるので、そもそも感想を述べる資格はないのかもしれないが。
でもどうしても動物が可哀想な目にあう話は読みたくないので……

それを除いても、なんか今回は尾端が何をしたのかが描かれなかったり
(もちろん想像はつくんだけど)
前作は「よくわからないけど、こういう事があって今こういう事象が起きてるなら
こうしてみればとりあえず良くね?」的な話だったのが、今回は「これはこういう事だと思う」
みたいな事象の解説をするというか、とにかくキャラがちょっと違ったように感じた。

そう、前作では起きた怪異は基本的には解決はしてなかった。
解決はしないけど、家に手を入れることによってその怪異が住民に影響がないようにするって
感じだった。
それと比べると今作は、一作目は影響が出ている本人はほったらかしで終わっているし
他も怪異の謎解き的なことが多かった気がする。

怪異自体には何もできない、だから影響がないように逸らすって感じが面白かったので
ちょっと肩透かしに感じたのかも

# by happiness_riki | 2023-04-08 13:14 | *読書記録 作家あ行
角川ホラー文庫

この作者さんは『ぼぎわんが、来る』(「来る」のタイトルで映画化)が有名なんだけど
実はそっちは読んでない。

今作はSFホラーっぽい話の短編集。
怖いというより基本的に後味が悪い、イヤな気分になる作品ばかり。

中でも「コンピューターお義母さん」は将来的にこんな未来が訪れてもおかしくないような
内容で、余計にイヤな気分になった。
いやまぁ自分が生きてるうちにそうなるかは知らんけど。

インターネットが当たり前になって、色々な技術がどんどん進んで
便利な世の中になった筈なのに、何故か人の心はあまり豊かにならない。
ならないどころか、簡単にたくさんの情報が手に入ること、簡単に自分の意見を世界に
発信できることが逆にマイナスに働いているような気すらしている。
(※個人の感想です)

そんな風に感じてる世界の未来を見せられてるようで、本当に後味が悪い。
(褒め言葉)

# by happiness_riki | 2022-10-11 04:27 | *読書記録 作家さ行