人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『冷たい校舎の時は止まる 上・下』辻村深月

講談社文庫 

ストーリーは期待以上に面白かった。
オチが見えれば、なるほどなと思うところも多く、そういう意味で非常に丁寧に書かれた
作品だなとも思った(偉そう)。

でも、そのオチへたどり着くまでが……ちょっとイタイなーというか。

あまりにもいかにもーな感じのキャラたちとか、いかにもーな友情とか。
私がもうちょっと若かったなら、違った見方もでき、受け入れることもできたかもしれないが。

ある意味すごい理想的な友情だとは思う。
それぞれ内面を理解し、お互いを認め合う。
誰もがこんな友達がいたらなぁと思うのではないだろうか。

でも何故作者は登場人物の一人を自分と同じ名にしたのか。
ミステリでは特によくあることだとは思うが、この場合はちょっと……違う名前にした方が
よかったのではないかなというか……正直これはイタイと思った。

登場人物と作者が同じ名前だからといって、当然ながらその人物像まで同じとは限らない。
それくらいは読者だってわかっているけれど、それでもやはりぼんやりとイメージするのは
作中の同じ名前のキャラになってしまうと思うのだ。

登場人物の中で一番「繊細」で「心弱く」て、みんなに常に心配される。
そんな場面が物語中たびたび出てくるようなキャラを、何故わざわざ作者と同じ名前に
するのかと、読書中断している時に何度思ったことか。
もしかしたら他の人にはそれほど気にならないことなのかもしれないが、なんというか
私的には深月というキャラは身近にいたら正直アレだなーと思うタイプなので
(だから春子の気持ちがある程度わかる(笑))
余計に気になったのかもしれない。

最後まで読んでみれば、ちょっとだけまた見方も変わるのだが……。
なかなか複雑な感想を抱いた作品ではある。

再読度 ★★★☆☆
by happiness_riki | 2007-09-21 21:20 | *読書記録 作家た行