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『重力ピエロ』伊坂幸太郎

新潮文庫

面白かった。
それだけはまず言っておくが、それ以上の言葉を繋ぐのが難しい。

面白くて、でもイヤな話。
ストーリーは終わっている。だけど世界は終わらない。
いつか必ず訪れる決着を、それが訪れるのを望むべきなのか、望まないべきなのか。
許してはいけない、だけど許したい。

矛盾という言葉がグルグルと、頭の中を支配している。

以下は激しくネタバレしてますので注意!

このまま、何もなかったように生きて行くことは春には不可能だろう。遠からぬ未来、
国家権力によってか、はたまた春自身の判断によってかはわからないが、必ず罪は
償われるだろうと思う。
それを望むわけではない。けれど、それが行われない(その罪を許されてしまう)のを
望むこともできない。

春がもっといいかげんなヤツだったら良かったのに、と思う。自分の出生の秘密を知り
「そんなの俺のせいじゃねーよ」とグレてしまうような単純でいいかげんなヤツなら
こんな悲しい出来事には至らなかったのにと思う。

兄貴、兄貴と縋るように何度も出てくる春の言葉が悲しくて仕方がなかった。
自分達は兄弟であるのだと、確認するかのようで。

どんなに言葉を紡いでも、今の自分の「矛盾」を説明し切れないのがもどかしい。
こちらを立てればあちらが立たず、ではないが、全てが丸く解決する方法がないのだ。

世界は残酷だ。

この家族は最強だ、度 ★★★★★
by happiness_riki | 2006-07-07 01:10 | *読書記録 作家あ行