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『博士の愛した数式』小川洋子

新潮文庫

普段はその名を、むしろすっかり忘れているのだが、作品タイトルに興味をひかれて
手に取ると小川洋子だという、妙な引力。
映画化のニュースを先に知っており(好きな俳優さんが出演するので)、本屋でその
タイトルを発見して手にしたら、小川洋子作だった。

もちろんミステリではないので、謎もないし解決もない。
ただ、博士と「私」、そしてルートとの心暖まる日々の話である。
所々に展開される博士の数学話は理解できなくてもとても美しく、数学という分野が
いかに偉大な学問かを示してくれる。

ストーリーは家政婦である「私」の目線で語られるため、博士が何を思い、考え
過ごしていたかは推測することしかできない。
しかし80分という時間しか記憶の持たない彼が、「私」とルートとに出会ったことで
進まない時間の中に幸せを見い出していたことは確かであろう。
例えその幸せが次の日にはすっかり消え失せていたとしても。

博士の人生が、それでも大きく括って「幸せ」だったらいいのにな、度 ★★★★★
by happiness_riki | 2006-01-03 23:19 | *読書記録 作家あ行