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『夏の夜会』西澤保彦

光文社文庫

ああ、西澤さんらしい作品だなぁ、と思った。

過去に起こった事件について、いくつかの記憶から積み重ねられる推理。
それが、新たな事実(記憶)によって崩れ、再構築され、さらにまた…の繰り返し。
筋が通ったと思われるたびに、それを崩されるのだから、考える方(この場合は
見元と紅白)もたまったもんじゃないだろう(笑)

ある程度のオチ(他人事だった「事件」が実際は自分達が深く関わっていた)はまぁ、
ミステリをよく読む人なら想像もついただろうが、そこをさらにひっくり返すのは
さすがというか。

とはいえ、この辺は人によって違うのかもしれないが、人ってそんなに簡単に
忘れてしまうものなのかな、と。
自分にも、自分がしてしまった「悪いこと」の記憶、できたら忘れてしまいたい
記憶、あるけれど、やっぱり覚えているわけで…。された側はいつまでも覚えて
いるが、した側は案外忘れている、ってのは結構あるものだが、逆にした側にも
忘れてしまいたいけど忘れられないってこともあると思う。今回の事件のような
場合は、むしろ(先生の暗示があったにしろ)きれいサッパリ忘れるってのは、
不自然に感じてしまった。
まぁその辺は、やはり人によって、度合いによって違うのだろうし…もしかしたら
私が覚えてないだけで、何か実はとんでもないことをしていた可能性も、否定は
できない…。

そうやって考えていくと、自分の知っている自分の過去、どこまで信じたらいいか、
不安になるような…。

「あとになって思うと」みたいなコメントが、ちょっと多くて気になった。

私、それだけ飲んだら「考える」ことなんてできないと思う度 ★★☆☆☆
by happiness_riki | 2005-07-10 00:42 | *読書記録 作家な行