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『まぶた』小川洋子

新潮文庫

どちらかというと寡作な作家さんなのだと思うのだが、何故か本を目にする機会に
恵まれてしまう、不思議な縁のある方である。
正直、本を目にするまでは名前すら覚えてないのだが…。いや本当に。
なのに、たまたま新刊で平積みされている本に目が止まり、名前を思い出し
つい買ってしまう。
ちなみに新潮文庫はこの『まぶた』と『薬指の標本』、2冊しか出てないのに。
『薬指の標本』が出たのはかなり前だと思うのに(ここ2、3年じゃない筈)。
まぁ、本好きなら本屋にはよく通うわけだし、それほどビックリするような
モノでもないのかもしれないが…。
でも失礼を承知で言うと、この人の本が平積みされる本屋(比較的大型店)だと
行けない時は本当に一か月くらいマルっと行けないので…つまり小さい本屋だと
平積みされるほど入荷があると思えない…やっぱり不思議な縁を感じる。
とか言って、実はすごく人気の作家さんだったら大変申し訳ない! それくらい
この方については全然知らないのです。

そんな話はさて置いて。
普段ミステリばかり読んでいると、話の結末がない、オチがない、解決しない、
そんな話を読むとものすごく物足りないような、居心地の悪い思いをしてしまう。
この本に入っている短編はほとんどがそういうタイプの作品で、ここで終わり?、
これからどうなるの?、どういうこと?、とつい思ってしまうのだが、それが
不満かというとそうではなく。
なんというか、不思議な魅力に溢れている。
作中に起こる不可思議な出来事に対し、まったく現実的な説明はなく、居心地が
悪いを通り越して、怖いとさえ感じることも。そういう意味では、ホラーもしくは
ミステリと分類することも可能かもしれない。

とにかくわけがわからないのに、つい読み進めてしまう。
作品雰囲気が合わない人にはまったく合わないかもしれないが、うっかりハマって
しまうと居心地が悪いのにそれがいい、不思議な感覚に陥ってしまうだろう。
上手く表現できないが、生温いゼリーの中に浮かんでいるような…。

ところで表紙は何故ウサギ?度 ★★☆☆☆
by happiness_riki | 2005-01-15 03:02 | *読書記録 作家あ行